このメンバーじゃなきゃやりたくないーーいわきのロックを体現するバンドnotice it、5年ぶりのアルバム完成

2007年に結成された、いわきを拠点に活動する4人組ロック・バンド、notice it。尖ったポップ感覚とロックのダイナミズムを、ポストパンク、ダンス・ロック、オルタナティヴなどの音楽を通過し昇華させている。津波から生還したヴォーカル政井大樹を中心に福島を代表するバンドとして活動を続け、約5年ぶりとなる2ndアルバムをリリースし全国に発信する。アルバム・タイトルの『lamp』は、過去戦争や震災の被害から幾度も復活し周りを照らし続ける地元の塩屋崎灯台からインスピレーションされ、自身もそういう音楽を発信したいという想いからつけられたという。OTOTOYでは本作をハイレゾ配信、1曲フリー・ダウンロードするとともにメンバー4人へのSkypeインタヴューを掲載する。

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約5年ぶりとなる2ndアルバムをハイレゾ配信

notice it / lamp
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC(24bit/48kHz) / AAC

【価格】
単曲 216円(税込) アルバム 1,944円(税込)

【収録曲】
1. 銀河
2. weekend
3. Symbol
4. 三日月
5. 僕らの明日
6. night run
7. 記憶
8. LANDROUND
9. REPRESENT


Symbol / notice it


INTERVIEW : notice it

福島県いわき市を拠点とするロック・バンド、notice itのニュー・アルバム『lamp』が届いた。東日本大震災の爪痕がまだはっきりと残るなかでレコーディングされた前作『綴る光 夜を游ぐ』から、約5年。いまや地元いわきのシーンを背負って立つバンドとなった彼らの成長と覚悟が、このセカンド・アルバムには刻まれている。ここからはそんな新作『lamp』の全容に迫るべく、notice itの4人に話を訊いてみたいと思う。

インタヴュー&文 : 渡辺裕也

簡単には説明できないような感情があの頃は渦巻いていた

ーーまずは前作『綴る光 夜を游ぐ』を発表した5年前のことを訊かせてください。当時は震災からまだ1年も経っていない頃で、その影響が作品にも強く表れていましたね。

高橋力(以下、高橋 / ギター) : そうですね。震災前のことを振り返ると、あの頃はここにいるメンバーの他にも、ギターとシンセサイザーがいて。その5人編成で初ライヴをやるぞっていうタイミングで、あの震災があったんです。それでちょっとバンド活動の見通しが立たなくなっちゃったんですけど、平山さん(平山勉 / ノーマディック・レコーズ主宰)のおかげで、行き詰まりかけた活動がまた動き出して。あと、こういう言い方はよくないんですけど、やっぱり大樹が生き残ったことで、僕らのなかにも使命感が生まれたんですよね(*震災時、ヴォーカルの政井大樹は大津波に遭遇し、一命を取り留めている)。「これは、やれってことなんだな」みたいに感じたというか。でも、よく思い出せないな。とにかくあの時は必死だったんで。

政井大樹(以下、政井 / ヴォーカル、ベース) : うん。まだ何もわかってない状況だった。

高橋 : 「自分たちはこれがやりたいんだ!」ってことを確かめてるような感覚だったよね。そこで「isansi」という曲が生まれて、ようやく歯車が合ったというか。

ーーまさにその「isansi」は、震災直後にみなさんが感じていたことを克明に刻んだ曲で。

高橋 : あの曲がアルバム全体を締めてくれたと思います。僕らのなかには地方のシーンで活動しているバンドとしての反骨精神みたいなものが渦巻いていて、それがアルバムの最後で「isansi」にたどり着くっていう。そういう流れのアルバムだったと思う。

政井 : 僕らにとってはものすごく意義のある曲でしたね。

ーーその反骨精神とは、たとえば何に向けられていたものなんですか。

高橋 : 社会とか、大人ですね。あと、今はそんなことないけど、やっぱり東京に対するコンプレックスとかもあったし。そういう、簡単には説明できないような感情があの頃は渦巻いていて、「とにかく何かを伝えなきゃ」っていう感じでした。

ーー歌詞は主に力さんが書いてるんですか。

高橋 : 以前は僕がよく書いてました。でも、やっぱりそれを歌うのは大樹ですからね。その大樹の人柄っていうのが、僕からすれば眩しいくらいにまっすぐなんですよ。だから、彼がもっと気持ちを乗せて歌えるようにしたかったので、今回のアルバムは共同制作で進めたものが多くて。

政井 : こう言ってくれてますけど、実際はほとんど力くんが書いてくれてますからね(笑)。僕はただ細かいところを修正しただけっていうか。あと、今は5年前とちがって、メンバーそれぞれ仕事をしながらやってるんです。なかには家庭をもった人間もいるし、今はそういう限りある時間のなかでバンドをやっているから。

ーーなるほど。そういえば、力さんはいま軽音部の顧問もされているんだとか?

高橋 : そうなんですよ。このバンドを結成した軽音部で、今はそういうこともやらせてもらってて。ただ、いま軽音部にくる大学生は「とにかくデカい音を出したい」とか、そういう感じではないみたいですね。どんなバンドのコピーがやりたいかって訊くと、SEKAI NO OWARIと返ってきたり、弾き語りがやりたいと言ってる女の子の待ち受けが三代目 J Soul Brothersだったりするんで、ちょっとよくわかんないっす(笑)。

やっぱり大樹の歌がnotice itらしさ

ーーあはは(笑)。前作を出したあと、メンバー・チェンジもあったようですね。

高橋 : はい。前作のツアーを終えた時点で、ギターがひとり抜けることになって。でも、そのときはまだ踏ん張りがきいたというか、まだ若かったんで(笑)。4人でもぜんぜんやれるし、これからまた新しいnotice itをやっていこうと。そう思っていたら、今度はシンセのやつが辞めることになって。どっちも結婚して子供ができたっていうのが理由なんですけど、これはどうしようかと。もしかするとこのバンドは終わるのかもしれないっていう雰囲気も、一時はちょっとあったんです。

政井 : その頃に杉下が入ったんだよね?

杉下潤(以下、杉下 / ドラム) : シンセのひとが抜けると決まったとき、いちばんバンドの近くにいたのが僕だったんです。それでドラムだった力くんがギター担当になって、その代わりに僕がドラムとして加わるっていう。

高橋 : これに関しては以前からいろんな人によく相談してたんですよ。僕はドラムというパートにこだわっていたわけでもないし、むしろ一向に上手くならなかったんで(笑)。杉下が叩いてくれるなら、ぜひそうしてほしいなと。あとはもう、(シンセサイザーが)なければないでしょうがないというか。とにかくストレートにやりたかったし、逆にロックっぽくなってよかったかなって。

杉下 : 今回のアルバムでも、あとから鍵盤を重ねたりはしてますからね。そこまでカラーは変わってないんじゃないかな。

片寄悠葵(以下、片寄 / ギター) : すっきりした感じはするよね? 以前は鍵盤とギターの音がぶつかってガチャガチャしがちだったから、個人的にそこはやりやすくなったかな。

高橋 : あと、やっぱり大樹の歌がnotice itらしさだからね。そこがしっかりしていれば、編成が変わっても大丈夫なんです。

ーー杉下さんは現在、ライヴハウス〈いわきソニック〉のPAもやられているそうですね。notice itとは元々どういう関係性だったんですか。

杉下 : 元々はその〈いわきソニック〉でよく対バンさせてもらっていた先輩バンドですね。notice itが前作を出した頃、僕はまだ高校生だったんですけど、彼らがツアーを回るときは一緒に付いていったりもしてたので、その流れのままメンバーになった感じなんです。で、その頃にはもうソニックで働いていたので、次はPAとして関わろうと思ってたんですけど、いつの間にかドラマーとして参加するようになったっていう。

1人でも欠けるようなことがあったら、そのときはもう解散すると思う

ーーこうしてメンバーが変わったり、なかには家庭を持った方もいるとなれば、音楽活動との向き合い方にもおのずと変化はでてきそうですけど、そのへんはいかがでしたか。

片寄 : どうだろう? 僕はそこまで変わってないかな。個人的に好きなものも変わってないので、あとはメンバーが用意してきた曲にどう向き合おうかなって感じですね。

高橋 : ただでさえ僕らはひねくれてるところがあるし、誰かひとりに他のメンバーが付いていくようなタイプのバンドでもないんで、そうやって各メンバーの個性を持ち込んでいくってことはこれからも大事にしていきたいんです。あと、曲とか歌詞に関しては、正直でたとこ勝負なところもあるので。

政井 : このバンド、今年で10年になるんですよ。俺と力くんは20歳の頃にこのバンドを組んだんですけど、やっぱり20代前半くらいの頃は尖ってるから、当時は「対バンはみんなぶっ飛ばす!」くらいの気持ちだったし、それこそ前作はそういう感じだったと思う(笑)。そんな僕らも今年で30歳になって、ちょっと大人になったというか。で、そんなバンドにこうして杉下が加わったことは、やっぱりデカいですね。杉下はいまライヴハウスで働いてるから、日々いろんなバンドを見てるし、そこで得た経験を俺らに伝えてくれてるんです。僕らはいわきを盛り上げていくために何が出来るかってことを常々考えているから、杉下がいま伝えてくれてることはホント大きくて。

高橋 : それに、俺とか大樹は感覚でやっちゃうところがあるので、そのときに何を考えてたのかわかんなくなっちゃうんですよ。でも、今はそこを杉下がまとめてくれるから。

ーー今では最年少メンバーがまとめ役だと。

杉下 : (笑)。僕はただ自分たちの納得いくものが作りたいだけなんですけど、たしかに前作は情報量の多いところがあったので、そこをもう少しシュッとさせたいなって気持ちはありました。今回のアルバムで、そこはうまく形にできたかなと思ってます。前作よりも前を向いた内容になってるし、このアルバム・タイトルも今の方向性をうまく伝えてると思う。

ーーこの『lamp』というタイトルは、地元いわきの灯台に由来しているんだとか?

高橋 : そうなんです。このタイトルはいわきの塩屋埼灯台からきてるんですけど、その灯台は歴史的になんども悲惨な目に遭っていて。でも、そのたびに復活してきたんですよね。そして今も夜の海を照らし続けてる。僕らの地元にはそういう誇らしい灯台があって、それがすごくかっこいいと思ったし、僕らもそういうバンドになりたいんですよね。僕らもなにが起きようが、諦めずにこうしてバンドをやってこれたし、そうやって経験を積んできたからこそ、人の痛みなんかも少しずつわかるようになってきたので、これからもそういう音楽をやっていけたらなって。そういう感じだよね?

政井 : うん。でも俺、別に使命感とかは全然ないんですよ。特になにも考えてないし。ただ、このメンバーじゃなきゃやりたくないっていう。それだけ。

高橋 : そうだね。僕らは「こういう音楽がやりたい」ってことで集まってるわけじゃなくて、友達同士のつながりが発展していくなかで、今こうしてバンドをやってるから。

政井 : そう。だから、もしここから1人でも欠けるようなことがあったら、そのときはもう解散すると思う。このメンバーがいるから、俺は今でもこうしてやってるんです。

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LIVE SCHEDULE

notice it 2nd album "lamp" Release Tour
2017年6月9日(金)@厚木THUNDER SNAKE
2017年6月17日(土)@酒田hope
2017年6月28日(水)@仙台MACANA
2017年7月8日(土)@奈良NEVERLAND
2017年7月9日(日)@町田 SDR
2017年7月15日(土)@福島OUTLINE
2017年8月12日(土)@club SONIC iwaki
2017年9月1日(金)@吉祥寺 WARP
2017年9月16日(土)@club SONIC iwaki

PROFILE

notice it

2007年に結成されたいわきを拠点に活動する4人組ロック・バンド。尖ったポップ感覚と、スパイシーなロックのダイナミズムをパワフルに、時にセンチに表現し、ポストパンク、ダンス・ロック、オルタナティヴ等の影響を鋭く昇華させている。津波から生還したヴォーカル政井大樹を中心に、福島を代表するバンドに大きくスケールアップ。今回、約5年ぶりとなる2ndアルバムをリリースし、再び全国に発信する。アルバム・タイトルの『lamp』は、過去戦争や震災の被害からも幾度も復活し、周りを照らし続ける地元の塩屋崎灯台からインスピレーションされ、そういう音楽を発信したいという想いからつけられた。

Official HP

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インタヴュー

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by 西澤 裕郎
筆者について
渡辺 裕也 (渡辺 裕也)

音楽ライター。自炊ブロガー。好角家。福島県二本松市出身。右利き。O型。

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